MySkin株式会社
皮膚のマイクロバイオーム受託解析サービス「MySkin」を提供。 「MySkin」は、シール式の微生物採取キットによって皮膚上の微生物叢を解析するサービス。細菌叢・アクネ菌・真菌叢の3タイプのメタゲノム解析が可能。また、微生物を対象とした全ゲノムシーケンス解析、アノテーション解析、プロモーター解析、代謝パスウェイ解析等を展開。
微生物を対象とする遺伝子解析サービス
本日はどうぞよろしくお願いいたします。
最初の質問ですが、御社の行われている事業について、ご説明いただけますでしょうか。
実は、我々のグループは二社ありまして、一つは「MySkin(マイスキン)」という会社で、解析事業を行っています。主に次世代シーケンサーやPCRなどを用いており、PCRにはコロナの時期に皆さんにも馴染みがあると思います。お客様から受注を受けて解析し、結果をお返しするという仕事です。具体的には、六階の603号室が実験室になっており、ウェットラボという設備があります。こうした設備を提供している場所は非常に少なく、特に研究設備や劇薬の取り扱いができる場所が必要です。
ウェットラボの重要性を詳しく教えていただけますか?
ウェットラボは研究設備を備えているだけでなく、劇薬の取り扱いにも対応しています。緊急用シャワーや洗眼器等が設置されていて、緊急時にはすぐに使用できるようになっています。大学ではこうした設備が整っているのですが、大学を出るとこうした場所を見つけるのは非常に難しいです。この場所を選んだのは、そうした設備が整っていることが決め手でした。
大学との連携も重要だと伺いましたが、どのような形で行われているのですか?
はい、大学の先生方と密接に連携しています。以前のオフィスは研究室から歩いて15分ほどでしたが、今は5分で到着できるようになりました。この場所は大学から紹介していただいたもので、非常に便利です。
そうだったのですね。ありがとうございます。もう一つの会社についても教えていただけますか?
もう一つは「TAK-Circulator(タックサーキュレーター)」という会社で、薬の開発を行っています。核酸医薬品の開発に取り組んでおり、7、8年かけてようやく形になってきました。薬の開発には10年以上の年月と多額の資金が必要ですが、ようやく目が見えてきた段階です。
ありがとうございます。それでは、御社の夢や目標についてもお聞かせいただけますか?
まず、ヘルスケア分野から「健康に美しく長く生きる」をサポートして、社会インフラ全体の維持管理の高度化を実現することが一つの夢です。また、日本発の技術を世界に広めたいという目標もあります。特に発展途上国などインフラが整っていない地域で、私たちの技術を活用して多くの人々の生活を改善したいと考えています。
それは素晴らしい目標ですね。個人的な夢についても教えていただけますか?
個人的な夢は、正直に言うと仕事が楽しいので、仕事を通じて社会に貢献することが私のやりがいです。現場の課題を解決するために技術を提供し、それが社会に役立つことが一番の喜びです。
現場での経験が今の仕事にどのように生かされているか教えてください。
現場での経験は非常に重要でした。現場の方々の課題を理解し、それを解決するための技術を開発することができました。特に、大学の理論を実践に落とし込むことで、現場での課題解決に役立てることができました。現場の声を聞くことで、より実践的な技術を提供することができると感じています。
インターネットのサイトを拝見しました。顔に貼って細菌を摂取し、それをチェックするサービスがあると伺いましたが、それについてもう少し詳しく教えていただけますか?遺伝子を解析する力がすごいという印象を受けましたが。
主として細菌叢の解析を行っています。細菌というのは、ウイルスよりも大きいもので、例えば腸内細菌もその一種です。多くの会社が腸内細菌を研究していますが、私たちは肌の上にいる細菌を研究しています。肌にいる細菌を特定の方法で解析する技術を持っています。
具体的には、肌の上にいる細菌をテープで採取し、その細菌を解析することで、肌の状態をチェックします。この方法は特許を取得しており、解析手法も独自のものです。私たちは化粧品会社等の企業と連携して、この技術を活用しています。
ありがとうございます。その細菌を取って解析することで、どのような需要に応えているのですか?私のような一般人の目線からですと、まだ具体的な利用方法が分かりにくいのですが…。
確かに一般の方には分かりにくいかもしれませんね。私たちは女性の肌の状態を改善するために、この技術を使っています。肌の状態は、遺伝、紫外線、そして細菌の影響を受けます。特に細菌のバランスが肌に大きな影響を与えることが分かっています。
例えば、女性の薄毛や白髪は頭皮の炎症によるものです。この炎症は特定の細菌が多くなることで引き起こされます。この細菌のバランスを整えることで、炎症を抑え、肌の状態を改善することができます。私たちは化粧品会社をサポートして、この細菌を減らす化粧品を開発頂き、実際に効果が出ています。
つまり、細菌のバランスを調整することで、肌のトラブルを改善するということですね。それを具体的な商品開発に結びつけているということですか?
その通りです。細菌の比率を解析し、その結果をもとに化粧品会社をサポートして製品を開発頂いています。例えば、ニキビの原因となるアクネ菌は若い時に多いですが、年を取ると減少します。このような細菌の比率を詳細に解析し、それを基に製品を作ることで、肌の状態を改善することができます。
私たちは、この分野で他にライバルが少ないため、独自の技術を活かして製品開発を進めています。お客様は主に化粧品会社や研究所の方々で、製品の根幹となる技術を提供しています。
なるほど、非常に興味深いですね。細菌の解析技術を使って、肌のトラブルを改善するというアプローチは、新しい視点だと思います。次に、なぜ現在行っている事業を始められたのか、そのきっかけについてお聞かせいただけますか?
実は、私は弊社の創業者ではありません。弊社創業者が体調を崩し、後継者を探していました。その後、取締役だった女性医師が一時的に社長を務められた後、最終的に私が引き継ぐことになりました。私が入社してから約一年半後の出来事で、それ以来ずっと弊社で働いています。
しかし、入社当時は売り上げがゼロの状態でした。そこで私は関係者と話し合って事業戦略を再構築し、新しい要素を取り入れて現在の形に整えました。例えば、薬の開発はほとんど進んでいなかったので、核酸医薬品開発として再スタートしました。
なるほど、それでは在籍されていた約8年間でどのように会社を成長させてきたのかを教えていただけますか?
はい、約8年間で会社を大きく変えてきました。入社してすぐに事業計画を立て、二、三ヶ月で新しい方向に切り替えました。それ以降は基本的にその方向性を維持し、成長を続けてきました。具体的には、売り上げがゼロだった時期から、現在の利益率50%の企業に成長させるために、多くの努力を重ねてきました。
その過程で何が一番大きな挑戦だったのでしょうか?
一番大きな挑戦は、既存の技術やアプローチを見直し、新しいものを取り入れることでした。特に薬の開発においては、全く新しい核酸医薬品のアプローチを採用しました。また、細菌の研究分野も強化し、化粧品会社や医薬品会社との連携を深めました。このような新しい挑戦を続けることで、現在の成功に繋がっています。
素晴らしいですね。これからの目標やビジョンについても教えていただけますか?
今後の目標としては、さらに技術を進化させ、グローバル展開を目指しています。特に海外市場での拡大を視野に入れています。また、薬の開発においても新しいアプローチを取り入れ続け、より多くの人々の健康に貢献したいと考えています。
ありがとうございます。非常に興味深いお話を聞かせていただき、感謝しています。これからも応援しています。
ありがとうございます。引き続き頑張っていきますので、よろしくお願いします。
最初の頃はお金が無くて大変だったと想像するのですが、その頃の話をお聞きできますか?
はい、実は最初の頃はかなり大変でした。特に細菌層の事業に関しては、大きな設備投資はしていないんです。ある程度の技術を組み合わせて、これで行こうと決めました。当時は一度の投資だけで、その後は何も追加投資をしていませんでした。これはキャッシュを生むビジネスモデルを目指していたからです。
しかし、TAK-Circulatorの薬の開発については何十億ものお金がかかります。さらに、成功確率は非常に低く、例えばひとつの化合物が薬になる確率は約三万分の一と言われています。世界では、薬の開発の約8割をベンチャー企業が担っています。しかし、多くの創薬ベンチャーは途中で資金不足や成果が出ないことから倒れていきます。
私たちは日本触媒という大阪の上場企業と組んでいます。資金提供に加えて、彼らが薬の製造を担当し、私たちが薬の開発を担当しています。この協力関係により、薬の開発を進めることができました。
日本触媒さんとの協力関係が大きな支えになったんですね。
はい、そうです。私たちは約7、8年にわたり開発を続けてきました。日本触媒の工場で作られた最初の薬は私たちの薬と聞いています。この協力関係がなければ、開発は非常に困難だったでしょう。
開発が進む中で、どのような困難がありましたか?
薬の開発は非常に難しいです。特にマウスでの実験ではうまくいくことが多いのですが、人間に適用するのは全く別の話です。人間の病態は非常に複雑で、一つの薬で全ての人に効くとは限りません。そのため、私たちは人間に対しても有効な薬を開発するために多くの時間と資金を投入してきました。
最近、開発に成功した薬があると伺いましたが。
はい、昨年の暮れ(2023年末)にようやく病人に対する効果が確認できました。この結果により、現在はライセンスアウトの段階に進んでいます。私たちが開発した薬を製薬会社に引き継いでもらうことが必要です。
製薬会社との連携について教えていただけますか?
私たちは重症喘息の分野で、主に海外の製薬会社と連携を模索しています。この分野では海外の製薬企業が先行してると聞いています。
最初の頃の資金繰りが大変だったというお話ですが、現在の事業運営についても教えてください。
はい、現在は比較的安定しています。細菌叢の解析事業がキャッシュを生むビジネスとして機能しているため、運転資金を確保できています。しかし、薬の開発には莫大な研究資金が必要です。この資金を調達するためには、パートナー企業や出資者の支援が欠かせません。
ありがとうございます。では、今後のビジョンについてお話いただけますか。会社のビジョンでも、ご自身のビジョンでも構いません。
はい、ビジョンについては、会社に来た時に「ヘルスケア分野から『健康に美しく長く生きる』をサポートして、社会に貢献する」を作りました。要するに、人が健康で長生きできる世の中を作っていく会社にしていこうということです。薬の開発もそうですし、細菌叢の解析もそうです。長く生きるだけでなく、美しく長く生きたいというテーマがあります。これをずっとやってきており、今後も変わることはありません。薬の開発と化粧品、細叢菌の解析の二本立てで、人々が健康で美しい生活を送れるようにしていきたいと考えています。
そのビジョンは永遠のテーマとも言えますね。
そうですね。現在、重症喘息治療薬を開発していますが、次は同じ化合物で癌の治療にも取り組む予定です。具体的には、発見した化合物を使って用途を広げていくということです。例えば、重症喘息に効いている16塩基の配列を癌の治療にも応用できると考えています。
同じ化合物を使って、異なる病気に対応するということですか?
そうです。私たちがターゲットにしている遺伝子は非常に長いので、その一部をターゲットにすることで病気を治すことができると考えています。大学が主体となり、他の病気への治療効果を基礎研究しています。例えば、炎症性の病気に効果があると分かれば、その配列を癌の治療にも応用することができるのです。
将来的には、さらに多くの病気に対して効果が期待できるということですね。
そうです。もしこの方法で効果が確認できれば、次々と新しい病気にも対応できる可能性があります。ただ、そこまでの時間はかかるでしょう。次の世代に引き継ぐことができればと考えています。
ビジョンが一つに絞られ、その先には無限の可能性が広がっているのですね。
素人の質問になり恐縮なのですが、先ほど重症喘息に効いている16塩基の配列を癌の治療にも応用されると伺いましたが、その差というのはどこでつけるのでしょうか?
そうですね、実はアプローチの方法がかなり違います。喘息の薬は基本的には吸入型が多く、呼吸器系に直接作用させます。一方、癌の薬は主に注射で投与します。注射で薬を投与する際には、ターゲットの部位に正確に届くようにしなければならないので、化合物を包むもの、つまりドラッグデリバリーシステム(DDS)が必要です。このDDSを開発することで、薬が特定の部位に届くようにします。なので、基本の化合物は同じでも、アプローチや方法が異なります。
なるほど、化合物は同じでもそのアプローチが違うんですね。
そうです。特に化合物の選定には非常に時間がかかります。例えば、四千から五千の遺伝子配列の中から16塩基を選ぶのですが、これは、ひたすら効果を試していくしかないです。私たちは東大の先生にお願いして、最も薬効がある配列を見つけ出しました。その後、前後の配列を調べてさらに効果的なものを選び出します。
実際に効果が確認されたものを選ぶわけですね。
そうです。実際に効果が確認されたものが複数あり、その中でも特に効果が高いものを選んで開発を進めています。そして、その配列を癌の治療にも応用しようとしています。
非常に興味深いです。これまでの取り組みで一番苦労した点は何でしょうか?
最初の頃はやはり資金面で非常に苦労しました。特に薬の開発は何十億もお金がかかり、成功確率も低いので、資金調達が大変でした。現在は日本触媒と提携し、資金面での支援を受けています。最初の頃は実験結果がなかなか出ず、資金も限られていたため非常に苦労しましたが、最近では実験結果も出始め、少しずつ状況が改善されています。
資金調達と実験の成功、どちらも大変なプロセスですね。
そうですね。特に重症喘息の薬の開発には多くの時間と労力がかかりましたが、ようやく病人に対する効果が確認されました。今後は製薬会社にバトンタッチして、さらなる展開を目指しています。薬の開発もそうですが、美しく長生きするための細菌層の解析も重要です。この二つのテーマを中心に、引き続き取り組んでいきたいと考えています。そして、将来的には癌の治療など、さらに多くの病気に対応できるようにしたいと考えています。
ありがとうございます。幼少期はどのようなお子さんだったのか、お聞かせ頂けますか?
幼少期は体が弱かったですね。今はすごく健康になりましたけど、当時はよく病気をしていました。そういった経験が今のビジョン、「健康で長生きする」という考えに繋がっている部分もあります。やっぱり健康でないと何もできないということを実感しましたね。
そうだったのですね。ちなみに、高校時代から運動を始められたとお聞きしましたが、具体的にはどんなスポーツをされていたのですか?
高校では短距離走をやっていました。今でも続けていますよ。今年も6月1日に次のレースが待っています。
すごいですね。年間どれくらい出場されるんですか?
今年は短距離で4試合かな。冬には妻と一緒にロードレースに出たりもします。長距離はあまり得意じゃないんですけどね(笑)。
奥様もスポーツがお好きなのですね。
そうですね。妻はマラソンが好きで、僕が走っているのを見て一緒にやりたいと言って始めました。でも、僕は短距離専門なので、妻とは別々に走っています。
本当にアクティブですね。健康を維持するための活動として、他にもジムに通われているとお聞きしましたが、どれくらいの頻度で通っていますか?
週に二回は行くようにしています。短距離のトレーニングができるジムで、子供向けの高速で走るマシンがあるんですけど、僕もそれを使ってトレーニングしています。
スポーツに関する質問にたくさんお答えいただきありがとうございます。
いままでの体験や経験で、現在の自分に繋がっているような出来事はありますか?
実は銀行員だったんです。四十歳まで銀行で働いて、その後ヘッドハンティングされて上場企業の財務担当役員を四社経験しました。上場経験も何回かあります。最終的なゴールとして社長になりたいと思い、弊社に来ました。
それが現在のスタートだったんですね。非常に興味深い経歴です。
最後に、東大前 HiRAKU GATEに対して何か期待することはありますか?
実は非常に満足しています。大学から遠く離れたくないという悩みを解決してくれましたし、ウェットラボの設備も素晴らしい。ベンチャー企業に優しい環境を提供してくれているので、とても感謝しています。今後も引き続きベンチャー企業に優しい環境を提供してくれることを期待しています。