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株式会社Pale Blue

事業内容

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事業内容

株式会社Pale Blueは、「水」を推進剤として用いた小型衛星用エンジン技術を提供する、東京大学発の宇宙スタートアップです。従来の衛星用エンジンが高圧ガスや有毒な推進剤を使用していたのに対し、Pale Blueは安全、無毒かつ取扱いが容易な「水」推進剤に注目しています。宇宙産業のコアとなるモビリティを創成し、人類の可能性を拡げ続けます。

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取締役

中川 悠一

1992年生まれ、茨城県つくば市出身。2015年に東京大学工学部航空宇宙工学科を卒業し、2017年に同大学院工学系研究科航空宇宙専攻修士課程を修了。2020年には同博士課程を単位取得退学後、博士号(工学)を取得。2020年4月にPale Blueを共同創業し、並行して東京大学に特別研究員として所属。2021年4月よりPale Blue専従。

「水」で推進する衛星エンジン技術

本日はどうぞよろしくお願いいたします。まず事業内容のご紹介をお願いします。

中川さん:2020年に創業した会社で、小型人工衛星に取り付けるエンジン、いわゆる推進機を開発・製造しています。人工衛星と言うと、皆さんがイメージしやすいものは気象衛星ひまわりや、通信で使われる衛星ですね。また、はやぶさのような探査機も推進機を使っています。
私たちのエンジンは、有毒物質を使わずに水を利用することで、安全で取り扱いやすく、安価であることが特徴です。

ありがとうございます。どうしてこの事業を始めようと思われたのですか?

中川さん:弊社の設立は、東京大学の研究室から始まりました。私たちの創業者4人は、東大で研究していた背景があります。東大と縁が深く、同大学の研究室での経験を活かしてPale Blueを立ち上げました。

人工衛星のエンジンというのは具体的にどのような役割を果たしているのでしょうか?

中川さん:人工衛星はロケットで宇宙に打ち上げられますが、ロケットは宇宙に行くまでの役割を果たします。その後、宇宙で人工衛星が動くためにはエンジンが必要になります。宇宙では地面がないので、車のようにタイヤを使って動くことはできません。そのため、何かをガスとして放出し、その反作用で動くことになります。私たちのエンジンは、このガスの放出を水を使って行います。水を蒸気やイオンの形で放出し、それに電力を加えてより高いエネルギーを持たせることで効率よく動かすことができます。

水を使ったエンジンというのは非常に画期的ですね。他の人工衛星のエンジンと比べてどのような違いがありますか?

中川さん: 一般的な人工衛星のエンジンには高圧ガスや有毒もしくは爆発性のある燃料を使ったものがあります。これに比べて、私たちの水エンジンは安全でコストも抑えられるという利点があります。有毒なガスを使うエンジンは取り扱いが難しく、防護服などの安全対策が必要です。そのため、コストが高くなる傾向があります。水を使ったエンジンはこうした取り扱いの難しさを軽減し、より多くの衛星に搭載しやすくなります。

最近、人工衛星の打上げが増えているという話を聞きますが、これはなぜでしょうか?

中川さん: 人工衛星が小型化してきたことが大きな要因です。大型のロケットの打上げには非常に高い費用がかかります。そのため、軽くて小さい衛星を多く打ち上げることがコストの観点から効率的です。また、小型の衛星を大量に打ち上げることで、1日に取得できるデータ量や観測頻度が増え、より多くのビジネスチャンスが生まれます。これにより、人工衛星の打上げ数が増えてきています。

会社全体の構成についてお教えいただけますか?

山中さん: はい。会社全体では約60人の規模で、そのうちの半分が研究開発に従事しています。他に製造部門、会社として欠かせないコーポレート、事業開発、経営企画等の部門があります。

現在の水エンジン事業を始めることとなった、きっかけについて教えていただけますか?

中川さん: もちろんです。私と創業メンバーの3人は、同じ研究室で人工衛星や推進機の研究をしていました。私が大学4年生の頃、はやぶさ2の打上げがあり、その際に「はやぶさ2の横に乗せる人工衛星を募集します」という話がありました。そこで東大等の研究室でチームを組み、このプロジェクトに参加することができたんです。

そのプロジェクトからは、どのような成果が得られましたか?

中川さん: プロジェクトで開発した「プロキオン」という衛星は、50キログラム程度の小型衛星でしたが、いくつかの世界初の成果を達成することができました。このプロジェクトを通じて、人工衛星の小型化とその運用に関する大きな経験を得ました。

そのプロジェクトが水エンジンの開発につながったのですね。

中川さん: はい、プロキオンのプロジェクト中、さらに小型でコストを抑えた衛星の開発が必要だと感じました。当時、私は大学4年生で、研究テーマとして「ガス以外の方法で推進機を動かす」という課題に取り組んでいました。その中で水を使う方法がうまくいきそうだと分かり、水を使った推進機の研究を始めたのがきっかけです。

水を使うことの難しさと、その解決方法について教えてください。

中川さん: 水を使うことにはいくつかの難しさがあります。例えば、水を高温で使用すると金属が腐食することがあります。しかし、我々の研究では、新しい技術や素材を使うことでこの問題を克服することができました。私たちの技術が水に非常に適していたことも大きな要因です。

時代と技術の進歩が味方してくれたのですね。

中川さん: そうですね。時代の流れと技術の進歩がちょうど私たちの研究にフィットしていたというのが大きかったと思います。今、我々が開発している水エンジンは、安全でコストを抑えた人工衛星の運用を可能にし、これからの宇宙探査を大きく進展させる可能性を持っています。

代表の浅川様についてお聞かせいただけますか?

中川さん: 代表の浅川は、共同創業者で代表取締役を務めています。普段はとてもフラットな人で、メンバーともフランクに話しています。まだ30代前半と若いですが、非常に優秀で何でもこなせる人物です。創業当初から自ら研究開発や装置の組み立てを行ってきた背景があり、現在でも事業家としての役割を果たしながら、海外の展示会やカンファレンスでのプレゼンテーションや交渉も自分で行っています。本当に多才で、社内外で多くのことをこなしています。

※株式会社Pale Blue 共同創業者 兼 代表取締役 浅川 純様

浅川様は非常に多才に活躍されているんですね。初めてお会いしたときの印象はいかがでしたか?

中川さん: 初めて会ったときは、まさに爽やかなお兄さんが来たという感じで、研究者というイメージとは違いましたね。白衣をぱりっと着ているというよりは、親しみやすい雰囲気です。

代表の方が自ら展示会でプレゼンテーションを行ったり、交渉を行ったりする姿は印象的ですね。では、山中さんから見た中川さんの印象についても教えていただけますか?

山中さん: 共同創業者の中川は、私の中ではまさに研究者というイメージ通りの人物です。元々研究気質が強く、研究に非常に熱心です。話し始めると非常に面白くて、先生のような存在ですね。

現在のビジネスモデルについてお聞かせ頂けますか?

中川さん: はい、現在のビジネスモデルとしては、人工衛星を作るメーカーに当社のエンジンを提供するサプライヤーとしての役割を果たしています。しかし、将来的には単なるサプライヤーに留まらず、より多くの技術的な価値を提供し、システム全体に食い込んでいけるような存在になりたいと考えています。

今後、会社としてどのようなビジョンを持っていますか?

中川さん: 私たちのビジョンは、宇宙産業のコアとなるモビリティを創成することです。水を燃料とするエンジン技術をさらに発展させ、より多くの衛星に搭載していくことを目指しています。環境に優しい技術を通じて、宇宙開発の新しいスタンダードを確立したいと考えています。

より具体的には、どのような方向性を考えているのでしょうか?

中川さん: まず、エンジンの性能を最大限に引き出せるような技術の蓄積を進め、システム側にも積極的に関与していきたいと思っています。また、推進機の応用分野にも進出し、自社で新しいサービスを提供できるようになることを目指しています。具体的には、推進機を活用した新たなビジネスモデルを展開し、我々自身が新しい価値を創造していくことです。

今後5年、10年の具体的な目標についても教えていただけますか?

中川さん: まず直近の5年以内には、推進機の事業を確立し成功させることが最優先です。その後の10年では、推進機を利用した新しいサービスを提供できるようにすることを目指しています。人工衛星のコア技術を持つ我々だからこそ、技術を活かしたサービス展開を通じてビジネスを広げていきたいと考えています。

社会への影響についてはどう考えていますか?

中川さん: 我々のミッションは「人類の可能性を拡げ続ける」ことです。持続可能な発展を目指し、宇宙というフィールドで人類の生活向上に貢献することが我々の目標です。そのために、社会全体がより良くなるような影響を与えたいと考えています。

ありがとうございます。今のご自身に繋がっている経験やエピソードについて教えていただけますか?例えば、「あの時の経験があったから今がある」というようなものです。

中川さん: はい、難しい質問ですね。実は、人工衛星自体に特別な興味を持っていたわけではありません。今も、人工衛星というよりは、世界を救うための一つの手段として捉えています。私自身の興味関心としては、大規模で複雑なシステムをどうやってわかりやすく考えるかという点が好きなんです。

それは具体的にどういう経験に繋がっているのでしょうか?

中川さん: そうですね、囲碁が一つの原体験になっているかもしれません。囲碁は非常に複雑なゲームで、いかにしてそれをモデル化し、わかりやすくするかという点に魅了されました。複雑に絡み合ったシステムをうまく解決するというのは、例えば飛行機や人工衛星、車などにも当てはまります。そういったシステムの研究に興味を持ち、最終的には人工衛星に行き着きました。

航空宇宙分野に興味を持つきっかけになった本などはありますか?

中川さん: ありますね。柳田邦男さんのノンフィクション作品がきっかけです。彼の書いた飛行機事故や原発事故の解析本を読んで、「どうすればこうした事故を防げるのか」と考えるようになりました。高校時代に漠然と将来はこうした分野で働きたいと思うようになり、それが航空宇宙工学への興味に繋がりました。

柳田邦男さんの本ですか。具体的にはどの本かお教えいただけますか?

中川さん: 最初に読んだのは『マッハの恐怖』ですね。飛行機事故の解析をテーマにした本です。その他にも、御巣鷹山の事故やチェルノブイリの事故について書かれた本もあります。そういった本を読み漁っているうちに、どうやったらこうした問題を解決できるのかという興味が湧いてきました。

そうした背景が今のキャリアに繋がっているのですね。最初から特に宇宙に関心を持っていたわけではなく、システム全般に興味があったということですね。

中川さん: そうです。システムを理解し、解決するという点に興味がありました。高校の時点では飛行機に興味があったのですが、大学に進学してから宇宙の方が未知の領域が多いと感じ、方向転換しました。東大に進学して、航空宇宙工学科に進むことを決めたのはその影響ですね。

東大前 HiRAKU GATEに期待することや要望があれば教えてください。

山中さん: 交流の機会を増やし、スタートアップ同士のネットワークを強化することを期待しています。また、Slackなどを通じた情報共有も非常に助かっています。オフィスの物理的な配置だけでなく、オンラインでの交流も充実させていただけると嬉しいです。

東大前 HiRAKU GATEに拠点を構える理由と利点は何ですか?

山中さん: 広い話になりますが、そもそも東大前 HiRAKU GATEさんにオフィスを構えようと思った一番の理由は、やはり宇宙関連の企業が少ない中で、東京に拠点を持つことが非常に重要だからです。特に我々のような企業にとって、海外とのやりとりや交通の便が非常に大事です。お客様や納品先に対しても東京に拠点があることは大きな利点です。

なるほど、東京に拠点を構えること自体が大きな利点なのですね。では、具体的に東大前 HiRAKU GATEに何を期待していますか?

山中さん: 1つは他のスタートアップとの交流ができることです。特に東大に近いので、東大のベンチャー企業とのつながりを持てることは大切です。また、異業種・同業種問わず交流できるスペースがあると助かります。単純に部屋があるだけでなく、共有スペースで定期的にイベントを開催することができると嬉しいです。我々も企画して参加することができる場として利用できるとありがたいです。

具体的にはどのようなイベントが考えられますか?

中川さん: 例えば、東京都内の同業者を集めて交流会を開催することができます。宇宙ベンチャーを集めて、東大前 HiRAKU GATEの他の入居者や周辺のつながりを通じて、横のつながりを作ることができます。他の入居者がイベントを開催しているときに顔を出して、新しい業種や企業について知ることもできます。そうしたつながりが広がるのを期待しています。

ありがとうございます。本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

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