代表取締役CEO
辻󠄀 秀典
株式会社Premo(東大半導体設計スタートアップ)代表取締役 Founder CEO。東京工業大学工学部情報工学科を卒業し、東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻を修了。博士(工学)。
驚きを与える半導体設計技術を追求
どうぞよろしくお願いいたします。まずは株式会社Premoの現在の事業内容について、一般の方にも分かりやすく説明していただけますか?
弊社は今までにない半導体を提供することをめざしています。技術シーズである設計技術を搭載した半導体を用いることにより、従来の半導体ベースのデバイスではサイズや形状、機能の制約により設置が難しかった場所にもデバイスをばらまくことが可能になり、これまで出来ていなかったリアル空間のあらゆるデータ収集を実現しようとしています。
ただ、我々はそのようなデバイスを作るのではなく、あくまで半導体のデザインを提供することに焦点を当てています。従来の半導体にはない特性を持った半導体を提供し、その使い方を示すことで、新しい応用方法を提案しています。たとえば、農業や畜産、道路や鉄道、航空宇宙分野などでの活用例を示していますが、これはあくまで一例です。
私たちがデザインする半導体は非常に多用途で、ユーザーやパートナーが独自のアイデアでさらに新しい使い方を発見してくれることを期待しています。我々は半導体の設計技術を突き詰め、どんどん進化させていくことがメインの業務です。
とても分かりやすくご説明頂き、ありがとうございます。では、現在の半導体事業を始めるきっかけや、その背景について教えていただけますか?
私たちの事業のスタートには、東京大学の入江・塩谷先生をはじめとする研究チームとの連携が大きなきっかけとなりました。私自身も同じ研究室で学び、計算機の歴史や高性能なコンピュータの設計について学びました。彼らが最近非常に良い研究成果を出しているのを見て、この成果を社会に活かさないのはもったいないと感じました。
日本には多くの優れた技術や頭脳がありますが、それが十分に活用されていないと感じています。特に、世界に対して価値を提供するイノベーションが少ない現状に危機感を持っています。現在、日本のスタートアップは国内市場に依存していることが多く、世界で戦える企業が少ないのが実情です。
その中で、私たちは世界に対して発信できるイノベーションを生み出すためにスタートアップを立ち上げました。優れた研究成果を持つ彼らと一緒に、これを日本の元気づける力に変えたいと思っています。
そのスタートアップの研究シーズ(技術研究の種)についてですが、いくつも選択肢があったと思いますが、特にこれだと決めたきっかけがあったのでしょうか?
彼らの研究成果を見ていて、自分が勉強してきた領域でもあり、非常に感動しました。こんな素晴らしい研究成果を誰も使わないままにしておくのはもったいないと思ったのがきっかけです。
会社の将来のビジョンについて教えていただけますか?
ビジョンは本当にたくさんあります。まず、私が会社を2020年に立ち上げた時、周りの人からは「今さらなぜ半導体を?」と冷たい言葉をかけられました。しかし、コロナ禍で半導体不足が深刻化し、その後の社会情勢により半導体が戦略物資として重要視されるようになりました。
特に日米の戦略的な動きにより、日本での半導体生産の重要性が見直されるようになりました。私たちは、半導体技術を次世代に繋げること、そして日本の技術を世界に発信することを目指しています。
もう一つは、優秀な若者が技術で世界と戦う場を日本に作ることです。日本のイノベーションを支えるためには、技術を持った人材が活躍できる企業が必要です。今の日本では、優秀な学生がコンサルティング業界に流れてしまうことが多いのですが、これは日本のものづくりの機会を失うことにつながります。
さらに、環境負荷を考慮した技術革新が重要です。現在、半導体業界では電力消費が大きな課題となっており、効率的なコンピュータを作ることが地球環境にとっても重要です。私たちは技術革新と地球環境の調和を目指し、持続可能な社会を作るために努力しています。
非常に興味深いお話ありがとうございました。貴社のビジョンがよく理解できました。
次に、会社としての夢についてお聞かせいただけますか?企業としての夢でも個人としての夢でも結構です。
私たちの夢は、世界に影響を与える企業を日本から出したいということです。世界的なリーディングカンパニーになることは一つの大きな目標です。私たちが成功することで、他のスタートアップも勇気づけられ、共に成長できるようになると思います。
株式会社Premoは現在、半導体事業を中心に活動されていると思いますが、スタートアップの支援や応援にも興味を持っているとのことです。横の繋がりや支援活動について教えていただけますか?
現時点では特に横の繋がりはありませんが、自分たちが成功することで他のスタートアップも応援できると考えています。成功の形は様々ですが、私たちがしっかりとした形を残すことが最初のステップです。
少し個人的な質問になりますが、幼少期はどのようなお子さんでしたか?
幼少期から電気に興味がありました。小学校の頃にはロボットにも手を出していました。当時のコンピュータはまだ身近なものではありませんでしたが、ファミコンなどのゲーム機を使ってプログラミングに興味を持ちました。小学校6年生くらいから、なぜコンピュータが動くのかを理解し始めました。
なるほど。地方出身で生きづらさを感じていたとのことですが、東京に行きたいという思いが強かったのでしょうか?
はい、地方では生きづらく、友達も少なかったため、高校卒業後は東京に行きたいと思っていました。東京に行けば、同じような人がいるだろうと期待していました。
大学時代から現在までの興味の移り変わりについて教えていただけますか?
大学では東京工業大学に入学しましたが、大学院は東京大学に進みました。大学院ではコンピュータの開発やプログラミングを仕事として行い、自分で稼ぎながら学費を賄いました。その過程で、会社を作りたいという思いが強くなりました。最初はベンチャー企業に就職しましたが、その後、自分で会社を立ち上げる決意をしました。
非常に興味深いお話でした。最後に、東大前 HiRAKU GATEに期待することは何ですか?
東大前 HiRAKU GATEには、東大発のスタートアップが集まる場として、雰囲気を保ちながら育てて欲しいと思います。スタートアップが成功するためには、こうした支援環境が非常に重要です。私たちのようなスタートアップが成長できる場を提供し続けてほしいですね。
ありがとうございます。本日のインタビューは以上となります。
こちらこそ、ありがとうございました。