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入居者紹介

株式会社Legalscape

事業内容

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事業内容

書籍やWeb上などに散らばる法にまつわる情報を、統合的なデジタルインフラとして再構築し、生成AIを含む高度な技術の適用を通じて、法律実務家を中心とする多様なニーズに応えるソリューションを提供しています。サービスの一つであるリーガルリサーチプラットフォーム「Legalscape」は、1万人を超える法務パーソンに利用されています。

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代表取締役

八木田 樹

東京大学理学部情報科学科、同大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻修士課程修了後、株式会社Legalscapeを共同創業。IPA認定未踏イノベータ。民事判決のオープンデータ化検討PT、デジタル庁 デジタル関係制度改革検討会 デジタル法制ワーキンググループ 構成員。

法情報xAIで法務をアップデート

簡単に御社のご紹介、ご説明をお願いします。

私たちは、株式会社Legalscapeという会社で、「すべての法情報を見渡す景色を描き出す」ことをミッションとして目指しています。

「法情報って何?」とか「景色を描き出すってどういうこと?」というところをご説明しますと、例えば日本を含めて多くの国では、何をするにも法律などのルールが関わってきます。道路を歩くにも交通ルール(道路交通法)があるし、結婚するのも民法で決まっています。数年前から仮想通貨が話題になりましたが、それには金融商品取引法というルールが関係したりしています。要するに、私たちの生活やビジネスには常に「法」が関わっているんです。

しかし、日本では法情報の多くがまだ紙だったりと、簡単にアクセスできる状態ではありません。例えば裁判所の判決は紙で保存されていますし、当時法律書籍の多くは紙でしか出版されておらず、検索もできませんでした。法律業界の外では当たり前のことが、あまり浸透していないのです。

そこで私たちは、法にまつわるあらゆる情報をデジタル化して、簡単にアクセスできるようにしつつ、使い勝手をよくすることで、様々なプロダクトを提供する取り組みを行っています。紙は紙で、通読する時に見やすいなどの利便性があるのですが、デジタルの形にもすることで、例えば検索ができるようになるなど、別の便利さが生まれると考えています。

Legalscapeは2017年に創業して、最初の数年間は少人数で活動していました。私と共同創業者の城戸は元々東京大学でコンピュータサイエンスを研究していましたし、さらにエンジニアが数名という小さな技術系のチームで、主に法情報をデジタル化して使いやすくするための技術を開発し、特許を複数取得しました。前述の通り、私たちの出自は技術系ですから、それと並行して、法律業界の出版社、法律事務所、企業の法務部、そして法務省や裁判所などの国の機関と関係を築いて、法情報とはどのようなもので、どのように使われているのか、どうなるとより便利になるのか、を含め多くを勉強させていただきました。

その後、Legalscapeは自社サービス “Legalscape” を提供し始め、事業の拡大と、それに伴う採用、資金調達などを進めてきました。今ではスタートアップとしてどんどん成長しています。

ありがとうございます。では、会社は現在7期目ですね。社員の方はどれくらいいらっしゃるのですか?

そうですね、今は4月1日時点で27名です。毎月1人か2人ずつ新しいメンバーが加わっている状況なので、今年中に40人くらいの規模になるかなと思っています。

お客様としてはどういった方々が対象で、どのようなお客様が多いのですか?

まず、私たちが提供しているサービスは、法律版のGoogleのようなものです。例えば「抵当権」というキーワードを入力すると、それについての解説書籍や法令が表示されます。これには著名な法律の先生が書いた本や民法の条文などが含まれており、必要な情報を徹底的に調べることができます。

このサービスは、2020年ごろ提供を開始しましたが、初期のお客様は大手の法律事務所や企業の法務部が中心でした。今でも、日本の五大法律事務所や、大手企業の法務部門など、非常に高いレベルで仕事をしている方々にもご利用いただいています。

さらに、最近では生成AI、わかりやすくいえばChatGPTのような技術をサービスの検索機能として組み込んでいます。これにより、専門的なキーワードを知らなくても、知りたいことを質問することで信頼のおける法情報を参照しながらAIが答えてくれるようになりました。例えば、「風邪をひいた従業員を、会社は強制的に休ませることができるか?」といった質問などです。

この新しい機能 “Watson & Holmes” を昨年の9月に導入してからは、法務部以外の方々、例えば総務部や人事部の方々にも利用が広がっています。というのも、弁護士の先生方や法務部の方はもちろんなのですが、それ以外の方であっても、法的な問題に対応しなければならない場面は出てきます。そういった時に、このサービスを活用していただいているのです。このように、元々は法律の専門家向けだったサービスが、より幅広い層に利用されるようになってきています。

会社は7期目とのことですが、研究開発ベンチャーとしてスタートし、2020年に正式版のサービスを提供開始し、昨年の9月にはAIを用いた機能もリリースされました。この間で、一番苦しかったことはありますか?

実は私はあまり「苦しい」と思わないタイプなんですよ(笑)。だからあまり覚えていないんです。今のLegalscapeは良い状態だと思いますが、もちろん、これまで常に順風満帆というわけではなかったですし、今でも常に何かしらの課題が発生しています。でも、会社を運営していると、多かれ少なかれ課題が発生するのが普通の状態なんですよね。

なので、「苦しいな」と思ったことは特にありません。常に何かしらの課題があって、それに優先順位をつけて対処するだけだと思っています。課題が発生するのは当然のこととして受け入れているので、「苦しい」と感じることはないですね。すいません、あまり明確な答えになっていなくて(笑)。

このタイミングがすごいターニングポイントになった、というようなことはありますか?

大きな一つのターニングポイントというわけではないんですが、やはり積み重ねが重要だと思います。法律業界は歴史ある重厚な業界ですので、創業して間もない頃は、私たちのようなテクノロジー系のバックグラウンドを持つ若い企業にとっては、いろいろと難しいこともありました。

初めの頃、たまたまご縁あってお取引させていただいた方々に信頼していただけるような仕事を積み重ねた結果、そのような方々からさらに別の方をご紹介いただけるようになりました。このように、良い仕事をしてご恩をお返しし、信頼いただいて、といった日々の積み重ねを通じて、法律事務所や出版社の方々など含め、さまざまな方に「Legalscapeが日本の法情報のデジタル化を進めてくれると良いね」と思っていただけるようになってきています。

この信頼と期待を裏切らないように、今後も努力していきたいと思っています。

今提供されているサービスの競合となる会社や、差別化されている要素について教えていただけますか?

いくつかある競合サービスでは、紙の書籍をそのままPDFにしたものを検索・閲覧できるサービスを提供しています。

他方で、私たちは “リーガル・ウェブ” と呼んでいますが、私たちは法情報の本来持つ構造を適切にデータ化しているため、様々な高度な機能を素早く開発・提供することができます。

例えば、私たちのサービスでは、ある書籍を読んでいるときに、その書籍が別の文献を参照している場合にワンクリックで飛べるような機能を数年前から提供していますが、この機能は他社さんではつい最近実装されました。
さらにその逆、つまり現在読んでいる部分が他のどの書籍のどの部分で引用されているかを “逆引き” できる機能なども搭載しています。

このような高度な機能を持つ私たちのサービスは、特にトップレベルの法律事務所や企業の法務部、弁護士の方々から高いご評価をいただいています。

また、前述の “Watson & Holmes” は、生成AIを活用した検索機能として日本で初めてリリースすることができました。この機能は企業法務部の方々含め、より広い層のお客様にご利用いただけるきっかけとなった機能ですが、これも、法情報を最適な形でデータベース化してあるからこそ、この開発のスピード感でご提供できているかと考えています。その点でもお客様に好まれていると自負しています。

こうした点が、他のサービスとの大きな違いだと思っています。

なぜ今の事業や会社を設立しようと思ったのですか?何かきっかけや原体験があれば教えてください。

実は特にこれだ!という原体験はないんですが、きっかけは大学院にいた頃です。私は法律ではなくコンピュータサイエンスを学んでいたのですが、そこでは何らかの形で社会にコンピュータサイエンスの技術を応用する分野に興味を持ちました。というのも、そもそも私は、コンピュータを人間の能力を拡張するものだと考えているためです。その文脈で社会に応用できるような分野を探す中で、たまたま法律分野と出会い、研究を始めることにしました。

具体的には、判例をコンピュータで分析するという研究を大学院でスタートしました。当時は法律とAIや自然言語処理を組み合わせる研究があまりなかったんです。しかし、そもそも法律の文章は論理的かつある程度決まった書き方がなされるなど、自然言語(人間の用いる言語)の中でも形式言語(プログラミング言語)に近い方ですので、コンピュータとの相性が良く、うまく実用化できるものができるのではないかと考えていました。

では、もう少し深掘りして、幼少期の経験について教えてください。例えば山形、東京、オーストラリアなど、いろいろな場所で過ごされたとお聞きしましたが、どんなご経験をされましたか?ご自身はどのようなお子さんだったのでしょうか?

そうですね、最初の話にもつながるのですが、日々課題が発生してもあまり動じずに対処していくことで、だいたいなんとかなると感じるようになったのは、幼少期の経験が大きいと思います。

一つは、私の水泳の経験です。私は3歳から大学に入るまでずっと水泳をやっていました。10歳の時にはJOCジュニアオリンピックカップという全国大会で優勝し、13歳の時にはオーストラリアでも全国大会で優勝しました。水泳の練習は今思い返しても本当につらく、確か1回の練習で6-8キロ泳ぐのですが、その練習が週に7-8回ありました。しかもオーストラリアでは冬でも外プールで練習していて、朝5時からの練習の後に学校に行って、帰ってきてまた練習する日もありました。当時のつらいストーリーはいくらでもあるのですが、要するに、毎日のようにやめたいと思いながらもひたすら頑張る、ということに小さい時から慣れることで、一種のメンタルタフネスのようなものは身についたと思います。

もう一つの経験は、11歳の時に家族でオーストラリアに移住したことです。私は現地の学校に入り、英語が全く喋れない状態で学校生活を始めました。最初は全く何も分からずやはりつらい思いをしましたが、とても優しい何名かのクラスメイトに支えられながら、徐々に周りの人が言っていることが分かるようになり、しばらくすると自分でも話せるようになりました。言語の壁だけではなく、カルチャー面のギャップや、たまに人種差別を受けることもありましたが、様々なことを乗り越えていくうちに、「大体のことはなんとかなるんだな」という感覚が、自信とともに自分の中心に形成されたように思います。

水泳も大変で、オーストラリアでの生活も大変でしたが、結果的にはどちらも良い経験でした。動じない、逃げない、やり切る力がついたと思います。

今後の会社のビジョンや、八木田さんご自身の将来についてお聞かせください。

Legalscapeが目指しているのは、法情報のデジタルインフラを担うことです。法情報はこれまで紙の形で存在して、法治国家である日本を根底から支えるインフラとして存在してきました。Legalscapeが法情報をデジタル化していくことで、あらゆる法・ルールに、いつでも、いかようにでもアクセスできる、日本を支える法情報のデジタルインフラに近づけるのではないかと考えています。そしてそのインフラの上に、現在提供しているリーガルリサーチプラットフォームにとどまらない、様々な新しいサービスを提供していければと考えています。

私自身は、デジタル技術を使って人類社会・文明を前進させることに強い興味があります。特にコンピュータは、人間の能力を拡張しうるものです。例えば、大量の紙の資料から必要な紙を探すのは難しい作業ですが、これをデジタル化してコンピュータで検索できるようにすることで、一瞬でできるようになるわけです。
その意味で、Legalscapeが法情報のデジタルインフラを創り、様々なサービスを展開していくことはまさにその一つであり、法治国家である日本においては特に重要なことだと考えています。こういったことを通じて、人類の進歩に少しでも寄与することが、私にとってのモチベーションの源泉になっています。

最後に一つだけお聞きしたいのですが、今後「東大前 HiRAKU GATE」に期待することは何ですか?

「東大前 HiRAKU GATE」に入居させていただいて、本当に感謝しています。元々私たちは東大のインキュベーションオフィスに入居していたのですが、社員数に対して席が足りない状態でした。そんな中、「東大前 HiRAKU GATE」をご紹介いただき、拡大を見越した広いオフィスに移ることができました。今では30名ほどになっていますが、快適に働けています。採用候補者の方にいらしていただくたびに「いいオフィスですね」と言っていただけます。

実際に「東大前 HiRAKU GATE」に入居している他の会社とはまだあまり付き合いがないのですが、同じくスタートアップに在籍される方々と、悩みや経験を共有できる場があればいいなと思っています。大企業もスタートアップも、それぞれに悩みがありますが、特に同じようなフェーズにいる会社同士で話すと知見を共有できることが多いですよね。

オンラインでの交流もいいですが、知らない人といきなり話すのは少し難しいこともあります。「東大前 HiRAKU GATE」のような物理的な場所があると、リアルな場での交流会などを通じて顔見知りになって、その後のオンラインのやり取りもスムーズにいくと思います。こうした場を提供してもらえることは、私たちスタートアップにとって本当にありがたいことだと思っています。

ありがとうございます。貴重なお話を伺えたこと、感謝いたします。

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