株式会社Citadel AI
Citadel AIは「信頼できるAI」を実現するスタートアップです。GoogleやWaymo等、ハイリスクAIの課題と実戦で闘って来た世界のエンジニアが結集し、開発をリードしています。弊社製品は、統一化されたテストを、生成AIから従来の機械学習モデルまで、汎用的に適用することが可能です。国際標準業界を代表するBSIをはじめ、医療、自動車、金融、製造業等のグローバル企業から高い評価を得ています。
「信頼できるAI」を社会実装する
株式会社Citadel AIについて、一般の方がわかりやすいように会社の説明をお願いできますか?
小林さん:通常AIのスタートアップというと、AIという技術を使って個別のアプリケーションや機器を開発している会社が多いのですが、私たちはそうした個別開発は行っていません。私たちは、そうした個別のAIシステムを、外部から自動で検証し、品質を改善するツールをSaaSで提供する会社です。いわばAIに対するお医者さんのようなイメージです。
それは具体的にどのようなサービスを提供しているのでしょうか?
小林さん:最近では、医療・交通・金融分野などの、いわゆるハイリスク分野でも、AIが用いられるようになっています。こうした個別のAIは、大量の学習データを用いて開発されますが、往々にして弱点領域が残ってしまっており、人間の生命や社会の安全を脅かしかねません。人間の受験生にたとえた場合、平均点は取れていても、不得意分野が残っていたりしますよね。それと同じです。
私たちが提供するシステムは、そうしたAIに対して大量の問題集を作って、その苦手領域をあぶりだす、予備校の模擬テストのようなシステムと捉えていただくと分かりやすいかも知れません。
なるほど、予備校のように模擬テストを行うわけですね。それは非常に興味深いですね。様々な分野で応用できそうです。
小林さん:そうですね。5年〜10年後には、もはやAIという言葉すら使われなくなって、電子機器やソフトウェアであればAI化されているのが当たり前という時代になるでしょう。インターネットにつなぐ際には、ウイルス対策ソフトを入れるのが常識であるのと同様、AIの信頼性・セキュリティを担保するソフトを通さずにAIを使っているの?と驚かれるような時代が、間もなく来ると思っています。
現在の事業を始めようとしたきっかけやスタートの部分について教えてください。
小林さん:Citadel AIを起業する前は、三菱商事に長年勤めていました。入社当初は、情報産業部門の一員として新電電の立ち上げに加わり、その後アメリカに駐在し、アメリカのスタートアップへの投資と日本展開を支援する仕事をして来ました。投資先がナスダックに上場し成功するのを目の前にして、自分もいつかは向こう側(スタートアップ側)に行ってみたいと思ったのも、その頃からです。
帰国後、私が所属していた部門が別の部門に吸収されることになりました。結果的にそのお陰もあって、共通ポイントのポンタの社長や、起業直前には、アメリカにある食品事業会社のCEOなど、自分でも予想していなかったような、国内外のさまざまな事業の経営経験を積むことができました。またその一方で、元々の私自身の生業でもあり、無限の可能性を秘めたAIの分野で、いつかは自分で起業してみたいという思いから、AIにかかわる技術の勉強なども少しずつ進めていました。
そんな中、ある知人を経由して、GoogleのAI開発の中枢であるGoogle Brainという研究機関でプロダクトマネージャーを務めていた、共同創業者で現CTOのKennyと知り合う機会を得ました。文字通り、邂逅という言葉が当てはまるような出会いでした。互いに意気投合して起業したのがCitadel AIです。
会社の将来のビジョンを教えてください。
小林さん:私が三菱商事に入社した当時と比較すると、残念ながら、今の日本は国際競争力が大きく低下してしまっています。まさに「失われた20年」です。一方で生成AIをはじめとした世界の技術進歩はすさまじく、人類をも凌ぐAIがいつ出てきてもおかしくない状況です。
こうした中で、弊社としては、世界にインパクトを与え、「こんな会社が日本にもあるんだ」と認められるような事業を創っていきたいと考えています。これからの時代を担う人が、自信を持って世界に挑戦して行くことができる、そのような切っ掛けとなる会社になることを、目指したいと考えています。
牧原さん:私は、当社に入社する前は監査法人で財務諸表の保証業務を、また証券会社では引受審査を担当してきました。その経験を通して、AIの信頼性を保証することは、AIが今後より広範囲に活用されるであろう世界において、社会的に必要とされるだろうと直感的に感じました。個人的にはAIは人々が日々利用しているインターネットと同じレベルで重要な社会インフラになり得ると考えています。この分野で、弊社の仲間たちと共にグローバルレベルでの競争に勝ち抜いていくことで、AIの信頼性の保証を通じて世界中に貢献することを目指しています。また、弊社のビジネスモデルが、日本発のグローバルスタートアップの一つの成功事例となることを目指し、その理想を思い描きながら毎日仕事に打ち込んでいます。
幼少期、どのようなお子さんでしたか? また、現在の個人的な目標や夢があれば教えてください。
小林さん:幼少期は生まれつき体が弱く、体に自信がついて来たのは、高校に入ってぐらいからのことです。一方で小学生の頃から宇宙や物理に興味がありました。大学でも物理学科に行こうかとも思ったのですが、バリバリの現代数学の力も求められるので断念しました。今でも時々現代物理の本を読んだりしています。
AIの技術が進めば、人間の時間軸では解けなかったような、複雑で大量の計算とシミュレーションを要するような問題が、一挙に解決する可能性があるのではないかと期待しています。その意味でもこれからの30年は、人類がこれまで築き上げてきた、何百年にも相当するような新たな時代になると思います。
小学生の時点で物理学者を目指していたというのが興味深いですね。私に小学生の娘がいるので、きっかけや興味を持ったタイミングなどをお聞きしたいです。
小林さん:何かテレビや映画などを見ていて、宇宙の果てはどうなっているのかと疑問を感じて興味を持ったのが切っ掛けだったように思います。量子力学とか超ひも理論とか、相対性理論とか、いろいろな理論はあるものの、実は現代物理でも根本的なところは全く分かっていないというのが現実で、非常に奥が深いです。
牧原さんはどんなお子さんだったか、今にどう繋がってきたか等をお教えいただけますか。
牧原さん:幼少期の私は、今思い返すとあまりリスクを取らないおとなしい子供でした。しかし、年齢を重ねるうちにチャレンジングなことに挑戦したい気持ちが芽生えてきたように思います。
入社するまでは比較的安定した会社に勤務していました。会計士の資格を取って監査法人に入り、公認会計士としてこの道が正解だと思っていましたが、IPO関連の部署に在籍していたため、クライアントがIPOしていくのをみて、いつかは自分でも挑戦してみたいなと漠然と考えるようになりました。そう思いつつも、グローバルオファリングのプロセスを理解するのも自分のキャリアにとっては重要だと思い、監査法人を退職してからは外資系の証券会社に勤務していたのですが、自分のいた部署が解散してしまったことをきっかけに、新しい道を進むことに決めました。
新しい一歩を踏み出され、今ここにいらっしゃるのですね。
牧原さん:はい、自分が監査法人と証券会社でこれまでやってきたことの総決算として事業会社での新しい一歩を踏み出しました。その背中を押してくれたのもAIの可能性とCitadel AIの仲間の存在です。1日1日がハードで大変ですが、その分やりがいがあります。そして、AIという非常に新しいものを取り扱っており、チームの全員が何かしらのAIに関するスペシャリストなので、管理畑の人間としては彼らの一言一言が新しい学びの連続です。
人間より頭の良いAIができると、どうなるんでしょうね?
小林さん:何をもってAIが人類を超えるかという意味にもよりますが、まだまだハルシネーションの問題などはあるものの、過去の情報に基づいた常識的な分析力という意味では、早晩AIは人類を超えると思います。ここから先は、人類にとっても未体験ゾーンで、使い方によって画期的な革命が起こるかも知れませんし、悪い使われ方をすると、危機的な状況に陥るかも知れません。人間が主導権を維持しつつ、AIと相互補完しながら上手く共存できるような世界を作ることに、私たちも少しでも貢献したいと考えています。
ありがとうございます。最後の質問になりますが、東大前 HiRAKU GATEに期待することは何ですか?
小林さん:東大前 HiRAKU GATEそのものよりも、この周辺エリアがもっと活性化できればと思います。例えば、目の前に大学があるのに、飲食店が少なく、閉店してしまったお店もあります。せっかくこういうビルが建つのであれば、周りも一緒に活性化して地域全体が盛り上がるような仕組みができるといいと思います。原宿のようにまではならなくても、学生も多いので、この地域全体が森のように活性化する方向に進むといいですね。
牧原さん:そうですね、私もこの周辺エリアがもっと活性化することを期待しています。ここだけがスタートアップの拠点となってしまうのではなく、周りの地域も一緒に活性化していけばいいと思います。例えば、飲食店などがたくさんできて地域が盛り上がっていくようなことがあると良いと思います。
牧原さん、何かここで働いていて思うことはありますか?もっとこうしてほしいなと思うことはありますか?
牧原さん:はい、エンジニアやファイナンスなど職種ごとの横のつながりの観点から情報交換ができる場があればと思います。そういう場があれば、顔を出してみたいので、交流の機会が増えると良いですね。