CEO
小笠原 英明
内科臨床、基礎研究の経験を経て、2010年から約8年間国内大手製薬株式会社にて主に安全性業務、臨床開発、導入案件評価に携わる。2018年9月株式会社タンソーバイオサイエンス設立。
先端試験技術により創薬研究を支援
今日はお時間をいただき、ありがとうございます。まず最初に、会社のご紹介をいただけますか?
はい、ありがとうございます。私どもは株式会社タンソーバイオサイエンスと申します。一言でいうと、新しく薬を作ったり薬を改良したりする際に、その候補となる化合物を評価するための試験を行う会社です。Gタンパク質共役型受容体 (略称 GPCR)という、薬の標的として重要なタンパク質の一群に特化した技術を持っています。
主な顧客は製薬企業でしょうか?
はい、そうです。製薬企業の研究部門が主な顧客です。製薬企業はひとつの新薬を開発するために、数万種もの化合物を検討します。体内の標的に作用しそうな化合物が見つかると、まずは細胞を使った実験、次に動物実験、そして最終的に人での臨床試験へと評価を進めます。我々の技術は、新薬開発の過程の一番上流の部分で、候補の化合物が狙った標的にちゃんと作用するかを評価する技術を提供しています。なので、事業としては創薬、つまり薬を創る研究の会社です。
ありがとうございます。現在の事業を始めたきっかけを教えていただけますか?
私の大学の同級生が研究者をしていまして、彼とその同僚が創薬に役立つ試験の発明を大学で行いました。それが2010年代後半のことです。その頃、私は国内の製薬企業に勤めていて、その業界の中を知る人として、自分たちの発明についてどう思うか、事業化の可能性があるかという意見を求められたのがきっかけです。そこで、私の同級生とその同僚研究者、そして私の三人が初めて顔を合わせました。その発明について話を聞いたところ、非常に興味深い技術だったので、起業するならぜひ仲間に加えて欲しいと申し出ました。それで三人の会社が出来上がった次第です。
創業自体は2018年に登記されたとのことですが、現在は6期目ですね?
7期目になります。2018年の秋に創業し、年末で締めているので、現在が7期目です。
7年という長い期間の中で、一番大変だった時期や創業時のエピソードを教えていただけますか?
正直なところ、あっという間でした。比較的順調に来ていまして、大変だったことはあまり記憶にないんです。ただ、我々は外からの投資を受けずに自分たちの資金だけでやってきたので、売上が得られるようになるまで不安はかなりありました。
製薬会社への営業や顧客の確保について、特に苦労された点はありますか?
受託試験事業の立ち上げがコロナ禍と重なってしまったので、対面での営業が難しかったです。ウェブでの宣伝や代理店を通しての販売だけでしたが、ありがたいことにそれで順調に進みました。
大学の同級生の方が共同創業者としていらっしゃるとのことですが、大学卒業後すぐに一緒に事業を始めたのですか?
卒業したのは1995年です。その後20年以上の月日が流れ、彼と一緒に事業を始めることになりました。私たちは医学部の出身で、大学と臨床研修の病院が一緒でした。元同級生であり、元同僚でもあります。彼が研究をしていること、私が製薬企業に勤めていることはお互いに知っていたので、彼が私を思い出してくれたのが一番の理由です。
なるほど、再び一緒に事業を始めることになった経緯がよく分かりました。過去の話に戻りますが、小笠原さんの学生時代や幼少期の人物像について教えていただけますか?スポーツをやっていたとか、勉強や活動に没頭していたことなど。
学校の先生や同級生の親からユニークだとよく言われていました。今思うと必ずしも全てが褒め言葉ではなかったかもしれません。多数派に追従したくない、他人と違うことをしたい、という私の逆張り指向を評価してくれる両親でありがたかったです。読書が好きで、小中学生の頃井上ひさしや筒井康隆の小説を読み漁りました。スポーツは苦手でしたね。小学校から高校までの間に没頭していたことは特に一つに絞れません。移り気で、例えば切手収集に飛びついたと思ったら次は植物を育てるのに夢中になるといった具合です。
高校や大学では何か特にやっていたことはありますか?
高校生から大学生にかけて約5年間クラシックギターをやっていました。特に、大学1、2年生の頃はギターサークルが生活の中心でした。
なるほど、クラシックギターに没頭していた時期があったのですね。現在のご趣味や、仕事以外の時間の過ごし方について教えていただけますか?
知らない道を散歩するのが好きです。祠がある細い路地やいわくありげな廃墟に遭遇するとわくわくします。また、最近AIの進歩の速さに圧倒され、人はもはや知力で機械に対抗していけない、これからは体力勝負だ、と悟ったので、YouTubeのお手本を見ながらヨガマットの上で有酸素運動するのを日課にしています。
今後のビジョンや、会社として達成したいことはありますか?
弊社は他社にない創薬のための技術を持っています。この技術をさらに深堀し、創薬により役立つ技術を開発していきたいです。具体的には、今後の新しい薬、まだ治療がない病気や疾患に対する薬、そして副作用がない薬の開発に貢献していきたいです。
個人としての夢や目標はありますか?
以前スペインのサグラダ・ファミリア教会を見て、奇抜でありながら精緻な造形に感銘を受けました。完成したらまた訪れたいです。普段は美味しいものを食べてのんびり楽しく暮らせればそれで最高ですが、好奇心を失わず、常に新しいことを見つけて取り組んでいき、社会にも貢献できればと思います。
素晴らしいですね。会社のことやビジョンについてもお聞きできましたが、今後、東大前 HiRAKU GATEに期待することは何かございますか?
東大前 HiRAKU GATEさんには大変感謝しています。我々のような大学発ベンチャー企業を入居させる施設を作っていただき、非常にありがたいです。私たちも最初は大学キャンパス内で起業しましたが、時期が来たら出ていかなければならず、その次の行き先を探していた時にこのビルが建設中で、幸運にも入居させていただけることになりました。大学発の企業が最近どんどん増えていますので、そういった企業が発展していくために末永くお力を貸してくださるとありがたいです。これから起業する人たちもリスクを取ってチャレンジしやすくなると思います。今後もぜひご支援を続けていただきたいですし、できれば拡大もしていただけるとコミュニティとして大変助かります。
ありがとうございます。非常に温かいメッセージをいただきました。今日はお時間をいただき、本当にありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。